権利擁護(けんりようご)って何?

 「かわさき障がい者権利擁護センター」(通称「かわけん」)の「権利擁護」(けんりようご)って何でしょう。「権利擁護」の制度としては、よく「成年後見制度」が引き合いに出されます。行政の研修などでは、「成年後見」が「権利擁護」の代名詞のように扱われることも少なくありません。

 もともと「権利擁護」の語源は「アドヴォカシー」という英語で、それは、(主張を蔑ろにされがちな)本人の意思を代弁する社会的活動、といった意味です。成年後見は「本人の意思を代弁する」という形になる場面がたたあるので、「権利擁護」の代表のように扱われやすいのだと思います。

 「かわけん」でも現在、(本人活動支援や相談活動など細々と続いている,しかしとても重要な活動とともに)法人としての成年後見活動(法人後見)が主要な活動の一つになっています。

 しかし、成年後見制度は、「本人のことを他人が決めてしまう」という側面・要素が多かれ少なかれあり、むしろ「権利侵害」の危険がある制度ではないか、と疑問視されたり批判されたりすることも多々あります。成年後見人が強い権限を持ってしまうため、「本人のため」という名のもとに、成年後見人によって、本人の意思・意向・思いが蔑ろ(ないがしろ)にされてしまう、という危険がつきまとうからです。

 それゆえ、「かわけん」の法人後見活動においては、「本人の意思の尊重」に特にこだわって活動しかねばならない、と思っています。

 また、「権利擁護」に関連する制度としては(成年後見制度以外にも)、虐待防止法や差別解消法などが、平成の時代の後半に続々と登場しました。「かわけん」でも、「成年後見」の活動ばかりに甘んじるのではなく、「差別禁止・合理的配慮」や「虐待防止」などの制度の趣旨がきちんと機能し、実現されることに向けた働きかけ・活動についても、しっかり力を注いで行かねばいけない、と強く思っています。

大石 剛一郎(弁護士)

 

「かわさき障がい者権利擁護センター」後見事業部会 大石 剛一郎